浜田さん:さて、皆さんは普段、耳の中のお手入れはどうしていますか?
私たちは体のほかの場所を清潔にするのと同じような感覚で日ごろ 何気なく耳の手入れをしていますが、果たして耳垢はきちんと手入れ しなければならないものなのでしょうか?そこで、今回は『耳垢について』赤尾耳鼻咽喉科 院長 赤尾一郎先生におはなしをうかがいます。
今日は耳垢についてということでお話をうかがいますが、その前にまず耳はどういった構造になっているのか、おはなしいただけますでしょうか?
先生:これは耳の断面図です。ここが耳介でここが外耳道で、ここが鼓膜になります。その奥が中耳になります。外耳道の皮膚は非常に薄く、下がすぐ軟骨やホネになっているんです。
(耳の構造図)
浜田さん:それで今回のテーマである耳垢はどのあたりにできるのでしょうか
先生:主にここの部分の外耳道にできます。中でも外側の軟骨部に多くできます。
耳垢ができる理由と役割
●外耳皮膚の保護
●外耳道の自浄作用
浜田さん:そもそも耳垢はどうしてできるんでしょうか?
先生:皮膚にできる垢と同じで、皮膚を保護する作用があります。
外耳の皮膚は蠕動運動をしています。耳垢は徐々に外へ移動します。
この運動により、老廃物、雑菌などを耳垢といっしょに外に出し、外耳をきれいな状態に保っています。
耳垢のできる場所
浜田さん:耳垢ができる過程をもう少しくわしくお話くださいますか?
先生:
●耳垢のできる場所
この図で青いところに耳垢は良く出来ます。外耳道でも、比較的外側のほうにできやすいです。
●耳垢の成分
外耳道皮膚の角質、皮脂腺からの老廃物や雑菌などです。
●耳垢のタイプなど 一般的には乾燥している場合がほとんどですが、中にはあめ耳といって始めから湿っている人もいます。
(耳垢のできる場所)
耳垢はできたあとどうなる?
●蠕動運動によって徐々に外のほうへ移動する
●最後には自然にそとにで出てしまう。
浜田さん:耳垢はできたあとどうなっていくんでしょうか?
先生:
●蠕動運動により耳垢が外に排出されることなど。先にも簡単に触れましたが、耳垢は耳の奥のほうから、 「あくび」や「咀嚼」などいった「口を開けたり閉じたりする運動」 によって、徐々にですか、外のほうに移動してきます。そして最後には「ぽろっ」と落ちてしまいます。
浜田さん:耳垢によって耳が守られているということですね。
先生:そうですね。
耳垢って掃除が必要?
●本来必要無し
①耳垢は咀嚼などで外へ移動する
②耳垢は自然排出される
●例外
あめ耳:耳垢が生まれつきやわらかい人
浜田さん:そうしますと、耳垢の掃除はしないほうがいいということなんでしょうか?
先生:耳垢は自然に外に出てきます。ですから、本来掃除は必要ありません。掃除をしているつもりでも、ただ、押し込んでいる場合もあります。また、外耳道の皮膚は非常に薄く、綿棒のように柔らかいものでも傷をつけてしまうこともあります。 例外として先ほど述べた耳垢の軟らかい「あめ耳」の方は定期的に掃除をしたほうがいいでしょう。
浜田さん:赤ちゃんとか子供も同じでしょうか?
先生:赤ちゃんの場合は特に、掃除をしないようにしてください。 綿棒などで入り口だけ掃除したほうが良いなどと、 良く言われていますが、耳垢を押し込んでいるだけの場合が非常に多いです。
耳垢栓塞
●耳垢栓塞とは
耳垢が外耳道内に栓のようにしてつまってしまう病気
●どのようにしてできるのか
耳垢の蠕動運動を耳そうじなどで阻害してしまい、耳垢が停留し栓状になってしまう
●どんな症状?
耳閉感、耳痛、難聴、耳漏(感染を起こした場合)
浜田さん:耳垢が原因で何か病気とかにはならないんでしょうか?
先生:不適切な掃除が続くと、せっかく自然排出しかけていた耳あかを押し込んでしまい、 徐々に雪だるま式に耳あかの固まりができてしまいます。このように耳垢が栓みたいになってしまうことを 「耳垢栓塞」といいます。「耳がつまった感じ」や「掃除をした時の痛み」、感染を起こすと「みみだれ」などの症状が出てきます。
どのようにして摘出するか?
●顕微鏡下で吸引、鉗子、フックなどを用いて摘出する
●摘出困難な場合
1)硬すぎる場合
2)痛みを伴う場合
3)炎症を伴っている場合
浜田さん:治療はどのようにして行われるのでしょうか?
先生:このような耳垢鉗子、フック鉤、吸引管などを用いて顕微鏡下で摘出します。 しかし、かちかちに固まってたり、摘出の際に痛みが強い場合は、「耳垢水」という耳あかを軟らかくする点耳薬を処方します。 数日、自宅で点耳してもらい、耳垢をふやかして、その後に摘出することもあります。
浜田さん:日ごろ、耳垢に対してはどう対処していったらよいのでしょうか?
先生:できるだけいじらないことをお勧めします。傷をつけて炎症を起こすと耳垢 が非常に多く出てきてしまいます。また、炎症を起こすと「何か入っている感じ;異物感」や「かゆい;掻痒感」などといった症状が出現し、また、いじるという悪循環に入ってしまいます。
浜田さん:無理には取ろうとしないで、少しでも気になる 場合は耳鼻科で摘出してもらうほうがいいということですね。 本日はどうもありがとうございました。